落ち込んだときに立ち直れる人になろう
今回はスポーツを通じて育むメンタル面について少し書いていきます。
スポーツは心・技・体この3つの要素から成り立っています。
しかし、ジュニアスポーツのメンタル面の強化や指導に対して日本は全般的に世界と比較したときに科学的なアプローチが遅れているという指摘もあります。
ただ、何と言ってもどのように自分自身と向き合って行くかという部分が大切になってきます。
メンタルトレーニングをする上で常に意識しなければいけないことは
「どのように自分と向き合い、対話をしてゆくか」
というポイントです。
良いときに良い状態ができるのは当たり前で、悪い状態の時にどこまで良い状態が作れるかが大切です。
それはスポーツに関係がないところでも同じなのです。
①動機付けから目標設定
目標の設定という部分は小学生でもできます。
学校で習うことであること、家庭教育の中でも大人と生活している中で育まれて行く部分です。
目標というと少し子どもにとってはカタイ印象があるかもしれませんが、夢であったり、理想とする自分、みたいな抽象的なものでも問題はありません。
子どもに夢を想像させる、夢というのはまさに動機付けまでしてくれる最強のオプションです。理想を描くことで、その理想を実現したい!という動機付けをすることができます。
「スポーツ選手になりたい」
競技を行う多くの子どもたちが抱く夢です。
その夢は、その競技に夢中になっていることやその競技を愛していることなどの気持ちの部分がそのほかのアクティビティや実生活のかなで多くの部分を占めているということを表現してくれています。競技が人生に影響を与えているということです。
実際に、スポーツを生業にしたいと思う子だけではないですよね。
だからと言ってコーチや大人が子どもに対して行う関わりに差はありません。
どのような子どもに対しても「動機付け」を行なっていくことは目標の設定から目標の達成までを支える重要なプロセスになります。
②目標を見失わない工夫・トレーニング
子どもだけでなく、人間は感情を持つ生き物です。
感情は上がり下がりするもので『コントロール』をする必要があります。
このコントロールこそがトレーニングをしてあげるべき能力なのです。
子どもの育成シーンに携わる人ならばどなたでも知っている「切り替え」。
これは物事の移り変わりや時間での活動の変化、アクティビティに対して適切に対応していくことを言います。
例えば、ゲームをしていい時間とそうでない時間の区別とその行動の移り変わりをスムーズに行える子どもとそうでない子どもがいるとします。
当然、できない子は未熟な子として指導の対象になっていきます。
「切り替え」は環境を変えてあげないと身につかないことがあります。
違った言い方をすると、「切り替え」ができない子は『わがまま』『だらしない』『自己中』などとネガティブな言葉で表現されてしまいます。
ここでのポイントは、目標を見失わないための工夫です。
切り替えができない子は「見通し立てる」ことができないだけです。
次に何が起こるのか、その次にスムーズに活動を展開できないときにどんな弊害があるのかなどのその先に起こる出来事に対する想像力が少ないだけです。もちろん、子どもの生活環境や家庭教育によって個人差がありますので、その仕組みや考え方を教えてあげるには多様な工夫が必要かもしれません。当然ながら、見通しを立てて行動をするには自立をする必要があります。
見通しを立てるために必要なことは、想像する習慣をつけることです。
私の指導経験のなかに、読書が好きな子どもはこの力を備えているというあくまで統計的なデータの蓄積があります。
私自身も子どもの頃は一週間に1〜2冊は本を読む読書家でした。
文章から物事を読み取る読解力は想像力も同時に育みます。
想像力はスポーツのあらゆる面で活躍する能力の一つです。トレーニングとしては、オープンクエスチョンで様々なことを考える機会やそれこそ文章を読み、想像を膨らませるような機会を設けることがいいと思います。
それ以外にも、自分自身との対話の機会を設けて「どうして切り替えができないのか」という部分から「どのように見通しのある生活を作るか」という核心に触れるような啓発機会を作っても良いと思います。
③ダメなときに踏ん張る力「底力」
アスリートに1流、2流、3流と格付けをしたときにもっとも大切な観点がこの「底力」だと私は考えます。
誰しも調子の良いとき、悪いときは存在しますが、その悪いときにどこまでのパフォーマンスを発揮できるかが重要です。
成長曲線にも見えますが、パフォーマンスを向上させるプロセスにおいても、気持ちのムラ(モチベーション)においても真っ直ぐに斜め上へと向上していく選手なんて存在しません。必ずアップダウンはあるのです。
その中でも上図の赤いラインが「底力」ということになります。青ラインが上がりながらも下がっていく、その幅がそこまで大きくないということは気持ちの部分やパフォーマンスにおいてあまり大きな起伏がない平均的に優れている選手ということになります。
逆に、この図のように起伏の激しい選手は、気持ちにムラが大きく、パフォーマンスは良いにしても悪いときはとにかく悪い方向に引っ張られてしまうという傾向が見えます。
赤ラインと紫ラインがいずれも高い位置に存在することが求められ、
特に赤いラインは上げ幅(曲線グラフの頂点)に近い方が良いです。
つまり、この感情の波(起伏)が小さい方がいいのです。
アスリートに限らずに、気持ちの浮き沈みが激しい人はいます。
いいときは上機嫌でニコニコ明るいですが、疲れたりストレスが溜まっていると沈んでしまったり、機嫌が悪くなったり・・・
そんなときはこのグラフをイメージしてもらえるといいと思います。
確かにショッキングな出来事が起きたり、不慮の事故に見舞われる際にポジティブにいられることはとても難しいです。
でも、人の力ってそんな逆境に試されるんですよね。どこで踏ん張って上を向けるかを考えてみましょう。
昔から人は災難に見舞われ、下を向いてしまうときに色々なものにすがって生きてきました。
『神は乗り越えられない試練を与えない。』
宗教や信仰など多くの考え方によって踏ん張ってきました。
そういった考え方も悪くはありません。
ただ、まず私が行なってほしいと思うことは
・周りの人を見ること
・辛さを共有すること
・ピンチはチャンスであると捉えること
人は絶対に1人では生きていません。必ず理解者がいます。これはアスリートも同じです。苦しさを1人で抱えることが悪循環の源です。辛さをしっかりと共有するのです。吐き出すのではありません。辛さというのは一種の薬なのでそれを全て吐き出して次に向かうのではなく、その辛さをしっかりと背負い、その重さを支えてくれるような人と次のステップに向かってみましょう。
また、ピンチはチャンスです。悪転の次は必ず好転がまっています。そこまでのプロセスは成長の材料です。
自身のメンタルやパフォーマンスがどのような曲線を描いて、どのような矢印を引くことができるかが大切です。
1流を目指すならば、赤ラインは高くなければいけません。
おまけ
私はどちらかというとネガティブな人間でした。
いつも悪いイメージを持って失敗を避ける、勝てない戦は挑まないタイプの人間でした。
ただ、失敗しかできない環境に身をおいた21歳のときに色々と変化しました。いくつかのトレーニングに取り組みました。
・ネガティブな発言はしない
・「引き寄せの法則」
・事なかれ主義で結構!
・人のいいところに目を向ける(都合主義)
・なんくるないさ精神
・この世は諸行無常であ〜る(仏教思想)
大学生の頃は自分なりにどのような人間になっていこうかと考える機会が多く、身の回りに魅力的な人も多かったこともあり、自らを啓発するのにとても良い環境でした。
リストアップした思想や考え方が自分にはフィットしたので少しづつ初めてみました。
一番大きい影響を受けたのが、アメリカ生活中は人の悪口を言わなかったことです。日本社会と少し違う構造のアメリカは、人の悪口が言いづらい環境にありますし、人を褒めるプロが多いです。(人との距離を縮めて敬う文化)その影響もあり、ネガティブな発言をしなくなりました。
そこから、自分が良いように物事を解釈し、失敗したときはなんとかなるさと思い、世の中なんてそもそも移り変わるんだからと大きな心構えで生きていました。
帰国したときに「別人みたい!」と言われ、それでそもままきていますが、自分自身は今のメンタリティ、性格がフィットしていて、そうでない人も巻き込んでやろうと考えています。心が変われば行動が変わると言いますが、まず行動を変えてみてはどうでしょうか?私は行動を変えたら心が変わったので、簡単なトレーニングからはじめてみてはいかがでしょうか?